春日山特別観察会の記録

1.日時:平成30年3月24日(土)

2.参加人数:24名

3.観察コース:近鉄奈良駅〜奈良公園〜柳生街道滝坂の道〜首切り地蔵〜春日山遊歩道〜奈良公園〜近鉄奈良駅

4.観察会の状況

・今年初めての観察会は場所を変えて特別観察会として、柳生街道滝先の道、春日山遊歩道で実施しました。
晴天に恵まれて実に快適な観察会であったが、時期的に少し早く開花している植物は少なかった。
・外国人観光客と鹿であふれた奈良公園を抜けて滝坂の道に入ると、訪れる人も少なく落ち着いて観察ができたが、谷筋はまだ寒く開花しているものは少ない。
首切り地蔵で昼食後、春日山遊歩道に入るとチャルメルソウ、トウゴクサバノオ、タチツボスミレ、イヌシデなどの開花が見られた。
 金剛山では、チャルメルソウはなく、ヤマトチャルメルソウ※(オオチャルメルソウ)を見ることしかないので比較できて楽しかった。


※ヤマトチャルメルソウ

  従来、金剛山など近畿の大和地方でオオチャルメルソウと呼ばれてきたものは、九州で普通に見られるオオチャルメルソウと異なり、花に鼻で感じられる臭いがなく、花を訪れる昆虫も異なることなどから、ヤマトチャルメルソウと命名された。(国立科学博物館 奥山研究員の講演)
開花時期には、花序あたりの花数や花弁の分岐数、雌蘂(しずい)の形等で見分けられるとのことですが、正式な論文として発表されるときにもっと詳しく分かると思います。


 5.観察できた植物

@主な草花(約19種、コケ、シダを含む葉だけの物も含む)
・ウチワゴケ、オオサンショウソウ、キランソウ
・サンショウソウ、スミレ、ジャノヒゲ、ジャゴケ、ゼニゴケ
・タチツボスミレ、チャルメルソウ、トウゴクサバノオ、トキワハゼ、
・ハカタシダ、ヒメウズ、ヒメカンスゲ、ベニシダ、マメヅタ、ヤマネコノメソウ
 など

A主な樹木(約22種、葉だけの物を含む)
・アセビ、イズセンリョウ、イタビカズラ、イチイガシ、イヌシデ、イヌガシ、イロハモミジ、オオバヤドリギ
・カギカズラ、カゴノキ
・サイカチ、サネカズラ(ビナンカズラ)、シデコブシ、シロダモ、タチバナ、ツバキ
・ナギ
・ハウチワカエデ、ヒサカキ、ヤブニッケイ
・ムクロジ、
リンボク
 など


〇植物の写真

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興福寺五重塔の横を通って トキワハゼ (参考)ムラサキサギゴケ
〇商店街を抜けて興福寺境内からスタートです。

〇公園の溝の中で咲いていました。本来は地を這わずに立ち上がるのですが、伸びきれていません。 〇よく似たムラサキサギゴケでは匍匐枝を出し、上側の花びら(上唇)は、二つに分かれてうさ耳のように飛び出します。

アセビ イチイガシ イチイガシ
〇鹿に食べられないアセビがよく茂っています。
〇葉の先は尖り、葉の上半分に鋸歯があって葉の裏には黄褐色の毛。一位樫。



サイカチ (参考)サイカチのトゲと種子 オオバヤドリギ
〇公園内のサイカチの古木。 〇葉が変形して鋭い刺のあるマメ科の植物。 〇葉は、卵形〜広楕円形でヤドリギより幅広。


イヌガシ イヌガシ雄花 シデコブシ
〇カシの名前が付いているが、クスノキ科のシロダモの仲間。カシではないことから”イヌ”ガシと名が付いたよう。 〇雌雄別種。雄花の方が雌花より大きく、雄しべが6個と退化した雌しべがあるが、雄株は結実しない。 〇愛知県や岐阜県を中心に分布するが、花弁が9〜25個と多く目立つこともあり、庭木として植えられることが多い。


ナギ イズセンリョウ イズセンリョウ
〇葉の幅は広いが、針葉樹。ナギラクトンが含まれるので鹿は食べない。 〇ヤブコウジと同じヤブコウジ科。雌雄別種。

〇ヤブコウジのような赤い実でなく、乳白色。



三体地蔵磨崖仏 オオサンショウソウ(雌花) サンショウソウ(雌花)
〇滝坂の道の磨崖仏「三体地蔵磨崖仏」。


〇歪んだ卵形の葉を互生するイラクサ科の植物。サンショウソウの葉よりより少し大きい。雌雄異株。 〇雌花は葉の付け根に柄がなく直接付く。雄花には柄がある。



チャルメルソウ チャルメルソウ チャルメルソウ・葉
〇いつも見ているヤマトチャルメルソウではなく、チャルメルソウに出会えました。

〇ようやく花が伸び始めたところです。


〇ヤマトチャルメルソウのように長くなく、葉脈周辺が紫色なので汚れた感じ。葉や葉柄には長毛もあるので毛深く感じる。


チャルメルソウ・花 (参考)チャルメルソウとヤマトチャルメルソウの花
〇チャルメルソウの花弁は羽状に3〜5裂する。 〇チャルメルソウの萼は横に開かず直立しているが、ヤマトチャルメルソウは横に開き(平開し)花弁の数も5〜9裂、ヤマトチャルメルソウの花弁には腺点がある。


タチツボスミレ トウゴクサバノオ トオゴクサバノオ
〇日の当たる斜面にへばりつくように咲いていました。

〇やっとトウゴクサバノオに会えました。今回、数少ない色の付いた花です。

〇ロゼット状の株になって花が咲いていましたが、金剛山ではあまり見ない姿のような気がします。


ウチワゴケ ハカタシダ カギカズラ
〇常緑性のシダ、葉身はうちわ型。日当たりの悪い谷筋の岩や樹木に着生する。


〇山地のやや乾いた林床に生える。



〇アカネ科の常緑つる性木本。若い葉は赤褐色を帯びる。葉の付け根から鉤が出ていて他のものに引っかかると太くなってしっかりと固定する。


ハウチワカエデ・花 (参考)ハウチワカエデ・花 (参考)コハウチワカエデ・花
〇ハウチワカエデの新葉と紅紫色の花。 〇葉がよく似たコハウチワカエデの花は、淡黄色なので花を見ると全く異なる。


シロダモ・葉 ヤブニッケイ・葉 (参考)ヤブニッケイ・葉
〇シロダモもヤブニッケイも3行脈が目立つクスノキ科の常緑木。
 シロダモの葉は枝先にまとまって付くが、ヤブニッケイは枝に交互に付く。
〇葉は2枚が同じ方角に付くと、次の2枚が反対側に付く、コクサギ型葉序。


リンボク・葉 リンボク・葉 イヌシデ・雄花
〇バラ科サクラ属の常緑樹。

〇葉身の縁は波打ち、針状の鋸歯がある。若いときは柔らかいが、やがて固く針のようになる。
〇雌雄同株。雄花が垂れ下がっている。雌花は葉と同じ冬芽に入っていて、葉と同時に展開する。まだ、葉も雌花も展開していない。


イヌシデ・幹
〇幹は白い模様が目立つものが多い。


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